時間栄養学を活用した健康方法は食事の質と摂るタイミングが体調を左右する?

時間栄養学

従来の栄養学は、どんな栄養素をどれだけ食べるかが重要視されていました。しかし、時間栄養学では「いつ食べるか」という視点が加えられます。私たちの体には体内時計が備わっており、この体内時計の働きを考慮したものが時間栄養学です。本記事を読んで体に良い食事のタイミングを意識してみてはいかがでしょうか。

執筆者:broccolin

資 格:管理栄養士|栄養教諭一種免許|食品衛生監視員|食品衛生管理者


時間栄養学とは

時間栄養学とは、体内時計の働きを加味した栄養学を指します。朝昼夕のどのタイミングで食べるかによって同じ栄養素でも効果の程度が変わること、食事が及ぼす体内時計への影響などを扱う学問です。

比較的新しい分野なので、日々研究や疫学調査が行われ、知見の集積が行われています。効果的な栄養素の摂り方を時間栄養学の概念と併せて学んでいきましょう。

体内時計とは

体内時計は、遺伝子が現れるのを調節して体内の1日のリズムを調節しています。脳の視床下部の視交叉上核にある中枢時計(メインの時計)とほぼ全ての細胞に存在する末梢時計(サブの時計)の2種類があります。

サーカディアンリズムとは

体に刻み込まれている1日周期の働きをサーカディアンリズム(概日リズム)といいます。私たちの体はサーカディアンリズムに調律されているため、朝起きると夜眠くなります。

ヒトの体内時計の周期は25時間

地球が自転する時間は24時間ですが、私たちが持つ体内時計の周期は25時間です。体内時計は地球の自転周期より1時間短いので、この差を埋めるために絶えず体内時計の調節が必要になります。

体内時計に影響を与えるもの

体内時計が生まれ持った周期で生涯動き続けることはありません。日々の生活に合わせて体内時計の周期は絶えず調節されます。どのような要因が影響するかをご紹介します。

日光を浴びる

カーテンを開けて就寝し、朝日を浴びて起きると目覚めが良いことが知られています。私たちヒトは昼に活動する生物なので、日光を浴びて1日の活動をスタートさせるようにしています。

メラトニンは眠気を誘うホルモン

メラトニンは脳の松果体という場所から分泌されるホルモンです。メラトニンには催眠作用があり、海外では睡眠薬として販売されています。メラトニンの催眠作用は強くありませんが、適切な分泌をコントロールすることで寝つきを良くすることができます。

  • 日光を浴びるとメラトニンが抑えられる

    日光や強い照明などの明るい光を浴びると、メラトニンの分泌は抑えられます。日光を浴びる日中はメラトニン分泌量が少なく、夜間は多くなります。しかし、夜間でも強い照明を浴びると、メラトニンの分泌量が少なくなります。これにより、寝つきが悪くなることがあります。

  • メラトニンの材料はアミノ酸

    メラトニンの材料はアミノ酸の一種であるトリプトファンです。トリプトファンはヒトの体内で作ることができない必須アミノ酸なので食事から取り入れる必要があります。トリプトファンを原料にセロトニンというホルモンが作られ、セロトニンからメラトニンが作られます。

朝食を食べる

朝食を食べると末梢時計がリセットされます。私たちの体は、朝食の摂取時刻を活動スタートの合図にしているので、食事をすることとそのタイミングは非常に重要です。

朝食を食べて交感神経を活性化させる

朝食を食べてすぐは交感神経の働きが活発になります。朝食を午前8時に食べた群と午後1時に食べた群を比較すると、午前8時に朝食を食べた群がより活発な交感神経の活動を示したという研究結果があります。朝食を食べるかどうかだけでなく、食べる時刻も意識したいものです。

温かい朝食で体にエンジンをかける

食事をとった後、体の中で熱が作られます。朝昼夕の3食のうち、朝が最も熱の産生量が多いです。食後の熱産生と体温上昇と交感神経の活性化は密接に関わるので、温かい朝食が1日のスタートに適しています。

体内時計の乱れで生じる問題

体内時計がリセットされず、ずれたままだと体にさまざまな不調をきたします。具体的にどんなことが起こるかを読み進めながら、ご自身が抱える不調と照らし合わせてみてください。

夜眠れない

就寝する頃にメラトニンの分泌量が十分でないと、寝付けません。夜眠れないと疲れが取れず、朝も早く起きられない悪循環ができてしまいます。

朝起きられない

寝ている間は交感神経とは逆に作用する副交感神経が優位です。朝になると交感神経の働きが高まり、血圧上昇などによって動き始めやすくなります。目は覚めていても布団から出られない方は体内時計がずれているのかもしれません。

寝ても疲れが取れない

就寝時にメラトニンの分泌量が少なかったり、体内時計が乱れたりしていると、質の高い睡眠をとることができません。深く眠るには体内時計のチューニングが必要です。

食欲をコントロールできない

寝不足が2日続くと、食欲を抑えるレプチンが減少し、食欲を増進させるグレリンが増加します。体内時計の乱れは食欲を司るホルモン分泌にも悪影響を及ぼすのです。

情緒が安定しない

交感神経と副交感神経がうまく切り替えられない場合、情緒の不安定さとして現れることもあります。また、精神を安定させるホルモンのセロトニン分泌も減少します。

さまざまな病気のリスクになる

体内時計が乱れると、生活習慣病にかかりやすくなることが明らかになっています。糖尿病や心筋梗塞といった病気になる危険性を高めてしまいます。

日本人の生活リズムの現状と課題

規則正しい朝型の生活が体に良いとわかっていても実行するのは難しいです。日本人がなぜ生活リズムを整えにくいか改めて考えてみましょう。

終業時刻が遅くなり夕食も遅い

残業で帰りが遅くなるのは仕方ないかもしれません。しかし、夕食が遅くなればなるほど、質の良い睡眠や体内時計の正常な働きを妨げてしまいます。

  • 夕食が遅いと体に負担がかかる

    夕食が遅いと、本来ならば休ませたい時間に体を働かせてしまいます。体内時計は食事のタイミングで調節されるので遅い時間に食べると寝つけないなどの弊害が生まれます。

  • 食後の体は消化吸収で忙しい

    食後の体は消化吸収のために動きます。食べてすぐ寝てしまうと、消化吸収が滞り翌朝の調子を悪くしてしまうことがあります。

朝食欠食により作業能率が上がらない

朝食を食べない習慣が身に付いている人は気づきにくいかもしれませんが、朝食欠食は作業能率へ悪影響を及ぼしています。なぜ朝食を食べることが仕事を捗らせるのか解説します。

  • 朝食と集中力、やる気の関係

    朝食摂取群、朝食欠食群、朝食摂取に加えて光を浴びた群の3群で、やる気や集中力への影響を調べた広島国際大学の研究結果があります。朝食欠食群以外の2群ではやる気や集中力が高まること、光を浴びることでその効果が昼食前まで続くことが明らかになりました。

  • 朝食を食べて悪循環を断ち切る

    先に述べた研究結果では、朝食摂取に加えて光を浴びた群では、疲労感も低減することが示されました。朝食を食べるという行動1つで良いサイクルが回り始めるので、現状を変えたい人は朝食を食べるところから取り組んでみるのがおすすめです。

日本における肥満の現状

日本国内でBMI25以上と定義される肥満者の状況をみてみましょう。南太平洋の国々やチリ、アメリカ、メキシコのように肥満が多い地域と比較すれば日本の肥満者は少ないですが、性別や年齢ごとに課題があります。

男性の肥満が増加

厚生労働省が実施した令和元年国民健康・栄養調査によると、平成25年から令和元年の間に男性の肥満者が増えていることが明らかになりました。女性の肥満者割合は20%前後の推移ですが、男性は平成25年の28.6%から令和元年の33.0%に4.4%増加しています。

女性は60代以降に体重増加

女性の肥満者が増加するタイミングとして、50代から60代の時期があります。この年代は基礎代謝が落ちたり、女性ホルモンのエストロゲンが減ったりする時期です。基礎代謝が落ちると今まで通りの食べ方では太ってしまい、エストロゲン減少による脂質代謝低下で内臓脂肪が溜まりやすくなります。

子どもの肥満も増えている

大人だけでなく子どもの肥満も大きな問題です。特に思春期の肥満は治すことが難しく、そのまま成人肥満になる場合があります。できるだけ早く健康的な食生活に矯正することが望ましいので、身近な大人がお手本を示せるようにしましょう。

時間栄養学をダイエットに活かす

「いつ食べるか」にフォーカスした時間栄養学はダイエットと親和性があります。そのメリットと実践方法についてご紹介します。

時間栄養学を応用したダイエットのメリット

ダイエットで挫折したり失敗したりする原因を取り除いてくれるのが時間栄養学ダイエットのメリットです。

  • 厳しく食事を制限するより効率が良い

    食事量を極端に減らすと、反動でやけ食いしたくなったり、栄養不足に陥り代謝が低下することで痩せにくくなることがあります。時間栄養学は、規則正しい生活習慣を通じて太りにくい体づくりをするので、無理なくダイエットできるのが魅力です。

  • 食欲をコントロールできるようになる

    ダイエットで最も辛いのは、食べたいのに我慢しなければいけないことです。食欲は本能的なものなので、気合いで容易くコントロールできるものではありません。体内時計を整えて、食欲を司るセロトニンやグレリンなどのホルモン分泌を適切な状態にすれば、甘い誘惑を前にしても今は食べなくていいと思えるようになります。

  • 体全体の調子が良くなりダイエットを継続しやすい

    体内時計を整えるとやる気を生むホルモンが多く分泌されるようになり、精神状態が良くなることが多いです。気持ちが前向きになるとダイエットも目標を見失うことなく続けられます。

時間栄養学を応用したダイエットの注意点

時間栄養学のメリットだけを鵜呑みにしてはいけません。注意点を踏まえて賢く痩せましょう。

  • 夜食を食べたくなる

    遅い時間に夕食を食べていた人が急に早い時間帯に食事を終えると寝る前に小腹が空いてしまいます。慣れるまでは、野菜スティックなど低エネルギーな夜食を食べるか食物繊維たっぷりで腹持ちの良い夕食を心がけるようにしてみてください。

  • 食事内容が悪いといつまでも痩せない

    いくら規則正しい時間に3食きっちり食べても、特定の食品や栄養素に偏った食事をしていると健康への道は遠くなります。時間を守れるようになったら炭水化物とタンパク質、脂質のバランスにも配慮してみてください。

体内時計を整え、ダイエットを成功させる方法

時間栄養学ダイエットに限らず、悪い習慣を減らし、良い習慣を続けることがダイエット成功の肝です。

起床する時刻を固定する

夜勤をしている場合を除けば、就寝時刻を固定するより起床時刻を固定する方が取り組みやすいのではないでしょうか。家を出るギリギリに起きている人はまず10分早く起きる、休みの日の遅起きを仕事の日の起床時刻の2時間後までにとどめるといったことから始めましょう。

起床後日光を浴びる

起きてすぐカーテンを開けるだけでなく、余裕があれば散歩に出かけて日光を浴びるのがおすすめです。
カーテンを開けて寝る場合は、朝日が昇ると同時に起床するようにしましょう。寝ている状態でしばらく朝日を浴びると、覚醒が中途半端になり気持ち良くない目覚めになってしまいます。

朝食を食べる

まず何でもどんな量でも良いので食べることが大切です。理想的な朝食の条件として優先したいのは、①エネルギーをしっかりとれる、②炭水化物とタンパク質を含む、③温かいの3点です。

朝お腹が空かない人は、夕食を減らす、就寝の3時間前には食べ終えることを意識してみてください。

食事の時刻を固定する

食事によって体内時計が調節されることを先に述べました。毎日決まった時刻に食事をとって体にリズムを刻めば、お腹が空く時間帯も定まってきます。いつでも食べたい、なんとなく今食べたいと思う頻度を減らしていきましょう。

夜ふかししない

夜ふかしは体に良いことがありません。睡眠のゴールデンタイム午後10時から午前2時は、大人にとっても貴重な時間です。この時間帯に分泌されるホルモンが代謝の促進や心と体のメンテナンスをしてくれます。

まとめ

健康な体を維持するためだけでなく、痩せるためのダイエットにも時間栄養学の応用が有効です。朝型の人と夜型の人がいるように体質には個人差があるので、自分に合う生活リズムを探る必要があります。

時間栄養学で勧められる生活リズムの実現には、仕事や家族との時間を調節することが求められます。習慣化には2ヶ月かかると言われているので、忙しくない時期を狙って健康のために生活リズムの矯正を行なってみてはいかがでしょうか。

 
   
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